俺と、悪いことしちゃおっか?
「やっぱり自分があげたものをこうして使ってもらえると、嬉しいもんだね。咲奈ちゃん、今日も……」
「あっ! 須藤くんいたーっ」
「おはよう、海里くん〜!」
まだ喋ってる途中だったけど、先輩は一瞬でファンの女の子たちに囲まれてしまう。
本当に人気者だなぁ、先輩は。
あっという間にハーレム状態だ。
「ごめんね、咲奈ちゃん。またね」
苦笑いの先輩が、ひらひらとこちらに手を振ってくれる。
学年の違う須藤先輩と、保健室以外で会うのは今日が初めてだったけど。
先輩から声をかけてもらえたことが、どうしようもなく嬉しかった。
私も朝から珍しく先輩に会えたから、今日の嫌な授業も頑張れそうって思っただなんて、口が裂けても本人には言えないけど。
「キャー! 海里くん〜」
「須藤くん、今日もかっこいい」
いま沢山の女の子たちに囲まれている先輩が、とてつもなく遠く感じる。
あれ、何だろう。この痛みは……。
このとき、他の女の子と一緒にいる先輩を見て、私は初めて胸がチクチクと痛むのを感じた。