俺と、悪いことしちゃおっか?
「あっ、ごめんね? あたしたちは別に、平沢さんを怖がらせるつもりはなかったの」
「そうそう。ただ、あなたに忠告してあげようと思っただけだから」
忠告……?
私が黙りこんでしまったからか、今度はわざとらしい笑顔を貼りつける先輩たち。
「ほら。海里くんってモデルもやってて、人気者で。海里くんのことを好きな女子は多いじゃない?」
「だから、“海里のこと独り占めしててムカつく”とか。“1年のくせに調子のってる”とか。平沢さんが、ファンの子たちに陰で色々と言われてるわけよ。だから……」
田村先輩の唇が、私の耳元に近づく。
「目をつけられる前に、海里から身を引いたほうが良いよって教えてあげようと思ってね」
どこから出してるんだと思うくらい低い先輩の声に、背筋がぞくりとする。
だけど、それって……。
私に、もう保健室へ須藤先輩を起こしに行くのはやめろって。先輩とはもう関わるなって、遠回しに言ってるようなものじゃない。
私は、拳をぎゅっと握りしめる。
「あと……」