俺と、悪いことしちゃおっか?
何? まだ何か言われるの?
「海里がプレイボーイだってこと、平沢さんは知ってる?」
「は、い」
「そう。海里は遊び人で有名だから。平沢さんの他にも、あなたと同じような存在の女の子はきっといるはず。だから……自分が傷つく前に彼から離れたほうが身のためよ」
私の、他にも……そういう女の子がいる?
さっき田村先輩たちが『俺のことを起こしてくれる子は、咲奈ちゃんだけで十分』って、須藤先輩に言われたって話していたのに……?
「今はたとえ海里に気に入られていたとしても、絶対に飽きられるときが来るんだから」
「そうそう。それに、海里くんのお気に入りはあなただけじゃないから。平沢さん、今うちらが言ったこと、ちゃんと頭に入れといてよね?」
田村先輩と鈴木先輩がそう言うと、2人はようやく私の前から去っていった。
「はぁ……怖かった」
先輩たちから解放された途端、全身から力の抜けた私はその場にへたり込む。
『海里くんのお気に入りは、あなただけじゃないから』か。
そういえば今、何時だろう?
スマホを見ると……。
「うわ、あと10分で昼休みが終わっちゃう」
私は、慌てて非常階段から走り出す。