俺と、悪いことしちゃおっか?
「うん。顔がほんのり赤いけど、熱はないみたい」
唇が触れ合いそうな距離に、心臓が騒ぐ。
「もし本当にしんどいときは、無理してここまで俺を起こしに来てくれなくても良いんだよ? 咲奈ちゃんの身体が一番大事なんだから」
「……っ」
先輩に言われ、心の奥のほうがジンとする。
「あれ? なんだかさっきよりも頬が赤いけど、ほんとに大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
「あ。もしかして、照れてたりする?」
「……だって、先輩の顔が近いから」
「そっかそっか。ほんと、可愛いなぁ咲奈ちゃんは」
熱くなった頬を、先輩の指の腹で撫でられる。
「だけど、今日はいつもの時間を過ぎても来なかったから。どうしたのかな? って。もしかして何かあったのかな? って、心配だった。だから、顔見せてくれて安心した」
「私も。先輩に会えて嬉しいです」
今日は来て良かったと、心から思う。
それに、須藤先輩の優しい笑顔を見るとほっとする。
田村先輩たちに、怖いことを言われても。
もし、ファンの人たちの目の敵にされたとしても……。
私は、やっぱりこれからも須藤先輩に会いに保健室へ来たい。