俺と、悪いことしちゃおっか?
「……あれ? 咲奈。今日も行かないの?」
昼休み。友達の梨沙子が、教室の自分の席で読書をする私に聞いてきた。
「うん。もう行かなくて良くなったから」
私は今、学校の図書室で借りた推理小説を読んでいる。
「そうなんだ? あんなに毎日、昼ご飯を食べたら、すぐどこかへと行ってたのに」
あの日から私は、保健室へは行かなくなってしまった。
須藤先輩に、目覚まし時計になるように言われたきっかけが何であれ、私はそこまでお人好しではない。
「そういえば咲奈、いつの間にかピンクのシュシュもつけてないんだね?」
「ああ、あれ? ちょっと、なくしちゃって……」
「えぇーっ、そうなの?! あれ、可愛くて咲奈に似合ってたのに〜」
「そう? ありがとう」
……初めて梨沙子に嘘をついてしまった。
先輩からもらったシュシュは、本当は家の勉強机の引き出しの中にあるのに。
須藤先輩のことを思い出したくない私は、それをつけられずにいた。