俺と、悪いことしちゃおっか?
耳元で、低音ボイスがした。
咄嗟に本から顔を上げると、私の席の真ん前に立っていたのは須藤先輩だった。
女の子にもみくちゃにされたのか、制服がよれている。
「どう……して?」
「いやぁ。咲奈ちゃんのクラス、何組か聞いてなかったからさ。探すのに苦労しちゃったよ」
いやいや。
「どうして、須藤先輩がここにいるんですか?」
「どうしてって。咲奈ちゃんに、会いに来たんだよ」
えっ? 会いに来たって。
先輩のほうからわざわざ来てくれるなんてことは、初めてかもしれない。
「今昼休みなのに。先輩、寝てなくて良いんですか?」
「ちょっと! 言っとくけど俺、いつも寝てばかりじゃないから」
須藤先輩が、唇を尖らせる。
「寝るどころか、1週間以上咲奈ちゃんが保健室に来てくれないから。どうしたんだろうってずっと気になって、ここ数日はちっとも寝れやしない。こんなこと初めてだよ。どう責任取ってくれんの?」