俺と、悪いことしちゃおっか?
「ちょっ、ちょっと須藤先輩! おろしてください!! 皆が見てます」
これは、さすがにまずい。
田村先輩たちに、また何か言われてしまうのは目に見えているし。
それ以外の女子の反感も買ってしまいそうで……怖い。
「ダーメ。おろしてって、何言ってんの。咲奈ちゃん、怪我してるでしょ。さっきも動けないでいたし」
「う……っ」
先輩に言い当てられて、何も言い返せない。
「人の目なんて気にしなくて良いよ。見たい奴には、勝手に見させておけば良い。それよりも今一番大事なのは、咲奈ちゃんなんだから」
「……すいません」
それでも、恥ずかしい気持ちは拭えなくて、私は俯いてしまう。
こんなお姫様抱っこなんて……初めてしてもらっちゃったな。しかも、須藤先輩に。
皆の注目の的になってしまって、すごく恥ずかしいけど……。
私は、先輩の顔をそっと見上げる。
須藤先輩との顔の距離が近くて、ドキドキする。
久しぶりにこんな至近距離で見た先輩の顔は、相変わらず綺麗で。
先輩の整った顔だけでなく、私を抱き上げている逞しい腕にもときめいてしまう。