俺と、悪いことしちゃおっか?
うう……先輩の息が耳に!
「そっ、そんなことできるわけ……」
「あっ、海里。こんなところにいた〜!」
「どうしたの? 海里くん。1年の子なんかと一緒に……」
私が話している途中で、須藤先輩のファンであろう2年の派手な女の先輩がふたり、保健室の扉から顔を覗かせた。
「ああ。それがさ、2人とも聞いてよ。この子にいきなり抱きつかれた上に、頭突きされてさ。見てよ、このおでこ。めちゃめちゃ痛いんだけどー」
わざとらしく目元に手を当て、泣き真似をする須藤先輩。
「何ですって!? あなた、海里の大切な顔に傷をつけて一体どういうつもり!?」
「ちょっとこっち来なさいよ」
ひっ、ひぃ〜〜っ。物凄い剣幕で、先輩女子がこっちへ向かってくる。
「あのふたり、田村さんと鈴木さん。俺の熱心なファンで有名だから。俺が傷つけられたって知ったら、一体何をするか……咲奈ちゃん、もしかしたら生きて帰れないかもよ?」
こんな脅しみたいな言葉に、負けていられるかって思うのに。
なぜか想像するだけで、ゾッとして。
頭痛がだんだんと、酷くなってきた。
「さぁ、どうする?」
にっこりと首を傾げる、須藤先輩。
……まだ始まったばかりの高校生活。
出来れば、卒業まで心穏やかに過ごしたい。
今、先輩たちに目をつけられるのだけは何としても避けたい。
そう思ったら、口が勝手に動いていた。
「やっ、やります……」