俺と、悪いことしちゃおっか?
「え? 咲奈ちゃん、何だって? 聞こえなーい」
絶対今のは聞こえてたでしょう。もしかして先輩、耳掃除してないの?
「……やらせて頂きます。その、目覚まし時計とやらを」
「そう。良かった。話の分かる子で。ねぇ、田村さんたち……」
物凄い剣幕でこちらへとやってきていた先輩たちの足が止まる。
「いやぁ、ごめんね。さっきのは嘘なんだ。実はこれ、俺が自分で転んでおでこ打っちゃったんだよね。だからこの子は、全然悪くないよ」
「えっ、そうだったの? 海里、大丈夫?」
「海里くん〜。あたし、手当てしてあげようか?」
うわ。須藤先輩の言葉ひとつで、こんなにも相手の態度が変わるなんて。
「それじゃあ、さっそく明日からよろしくね。咲奈ちゃん」
ああ、須藤先輩のお陰で助かったけれど。
なんだか、とっても面倒なことを引き受けてしまったかもしれない……。