年下男子
会社を辞めます
宮田君の予想どうり、後日私は営業部長に呼ばれた。
どうやら順の奥さんが営業部長宛てに連絡をしてきたらしい。
当時の事情も知っている営業部長は奥さんの誤解だとわかっていて、「一応確認するだけだから」と言ってくれたけれど、呼び出されて部長室に入った時点で社内を色んな噂が飛び交っていることだろう。

「山本君にも注意はするが、相手の奥さんはかなりヒステリックだから気を付けてくれ」
「はい、すみません」

謝ってみたものの、私にやましいところはない。
ただ仕事を全うしようと思っただけ。それだけなのに、なぜ私が注意されるんだろうと不満が顔に出た。

「とりあえず今回の件は上に報告はしない。私の胸に収めるつもりだから、君もそのつもりで」
「しかし」
相手は過去にもトラブルになった取引先のお嬢さんだし、もし騒ぎが大きくなれば部長に迷惑がかかるかもしれない。

「実は修平君から大事にしないでくれって頼まれていてね」
部長が少しだけ困ったなって顔をした。

「宮田君がですか?」
「ああ。ああ見えて彼は次期社長だから」

今はまだ一営業職として勤務しているけれど、秋の異動で企画室へ移動になって近いうちに取締役になるだろうと噂だから、当然それ相当の力も影響力も持っているはずだ。

「なあ加山君、君と修平君は・・・」
じっと私の方を見る営業部長の眼差しが、愁いを含んでいる。

「ただの同僚です。それ以上でも以下でもありません」
「本当に?」
「ええ」

順とのことがあって、部長も私を怪しんでいるのかもしれない。
今度は宮田君をたぶらかそうとしているとでも思っているんだろうか。
< 16 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop