年下男子
「さあ、ご飯にしましょうか?」

時刻は夕方の6時。
ちょうど1本目の映画を観終わって、小腹も空いたいい時間。
私はソファーから立ち上がってキッチンへ向かった。

「蘭さん、今日の夕飯は何?」
私の後をついてきた宮田君が聞いてくる。

「アグロの漬け丼と牛肉とレンコンのきんぴらと、ナスの揚げびたしよ。どれも大体できているから向こうで待っていて」
「了解」

月に数回土曜日の午後に私のマンションでホラー映画を見るのが、唯一の楽しみ。
とは言え、私と宮田君は純粋に同じ会社で働く仲間でしかない。
この状況を宮田君がどう思っているのかわからないけれど、怖くて本人に確認したことはない。

「蘭さん、飲むでしょ?」
「そうね」

待っていてくれればいいのに、テーブルを片付けたりグラスを出したりと準備をしてくれる宮田君。
彼は会社の後輩。年齢は23歳だから私より10歳年下。
入社2年の新人ではあるけれど、アメリカの大学を飛び級で卒業しこの若さで大学院卒。
当然とっても優秀な上、実は社長の息子。彼は、上場企業である『ミヤタ』の御曹司なのだ。
ちなみに、身長は185センチ。学生時代からサッカーをしているそうで、引き締まったいい体をしている。

「今日は和食だから、日本酒がいいかなあ」
「私はビールにするわ」
日本酒はあまり得意じゃない。
「じゃあ俺も」

私が漬け丼を運んでいくと、テーブルの上にはビールと取り皿が並んでいた。
何度も来ている家で勝手がわかるからとはいえ、よく働く男子だと思う。
顔立ちも少しワイルドで会社の女子社員の間でも人気があるから、きっともてるんだろうな。
正直、なぜ私に付き合ってくれるのか未だにわからない。
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