年下男子
その後、私は宮田君からのメッセージが来るたびに無視し続けた。
仕事では、課長に業務を引き継ぐための引き継ぎ書づくりに追われた。

そして、今日8月24日。
席は9月いっぱいまであるけれど、有休消化のために8月末で勤務を終える私にとって会社を去る1週間前。
さすがにこれ以上は伏せておけないと私の退職が発表された。

いきなり私の退職が発表されたことで、部署内がざわざわしていた。
みんな代わる代わる声をかけてくれるし、寂しがってもくれる。
中には送別会を何て言う人もいたけれど、そこは丁寧にお断りした。

そうこうしているうちになかなか仕事が進まなくて、残業になってしまった。

「お疲れさまでした」
いつものように声をかけ社員通用口を通ったのは午後9時を回った時間。
さあどこかで夕食でも買って帰ろうかと思った時、路肩に止まっていた車の中から声がかかった。

「蘭」
そこにいたのは車の窓から顔だけ出した順。
「何、どうしたの?」
悪いことをしているわけでもないのに、思わず辺りをキョロキョロしてしまう。

「とにかく乗れよ、送って行くから」
「いや、でも」
そんなことしたら奥さんが・・・

「大丈夫、俺がちゃんと話すから」
「でも・・・」
「ここにいる方が目立つだろ?」
「それはそうだけれど・・・」

困ったなあとしばらく悩んで、結局順の車に乗り込んだ。
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