年下男子
元カレと年下男子
「お前、会社を辞めるのか?」
車が走り出すのと同時に聞かれた。

「うん。実家の方も色々大変で、辞めることにしたのよ」
「本当は俺のせいだったりするか?」
「違うわよ。順のせいで辞めるなら、5年前に辞めていたわ」
「そうだったな。すまない」
決して嫌味で言ったわけではないのに、なぜか順が頭を下げる。

「やめてよ、順は関係ないわ。私の家の都合なんだから」
「本当か?」
「ええ」
そこは嘘ではないから、はっきりと答えた。

退職の理由は家庭の事情。それ以外にはない。でも、そう思わせるきっかけは順と宮田君だったのかもしれない。

「宮田には話した?」
「え?」
なぜここで宮田君の名前が出るのと首を傾げた。

「あいつ蘭のことをすごく心配していたから。この間の丸越デパートの件でも『2人で会えば加山主任が苦しい立場に立たされるだけだ』って詰め寄って来た」
「ふーん、そうだったの」
「てっきりお前たちは付き合っているのかなって思ったんだけれど?」
「違うわよ」
そんなはずない。

宮田君には会社を辞めることは話せていない。
今日だって何度か姿を見かけたけれど、声をかけられることもなかった。
私の退職はすでに耳に入っているはずだから知らないはずないけれど、何の反応もない。
さすがにここ10日ほどはメッセージも着信も無視し続けているから、愛想をつかされたのかもしれないな。
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