年下男子
「課長、すみません」

朝9時を目前にやっと姿を見せた課長に、私は駆け寄り声をかけた。

「何だ?」
いかにもめんどくさそうな顔。

まあね、私の急な退職で業務が増えたんだから機嫌が悪くても仕方がないか。

「急ぎの出庫申請に決済がなくて困っていたので、私の方で対応させていただきました」
本当なら課長を待つべきだと思ったけれど、その時間がなくて私が承認した。

「はあ?何勝手なことするんだ。お前はもう辞めるんだろ、勝手なことをするんじゃない」
「週末からの特設用の商品で時間がなかったんです」
「そんなもん知るか、ギリギリになって申請出すのが悪いだろう」
「しかし、」
「とにかく俺は知らん。あとはお前が責任取るんだな」
「そんな・・・」

元々課長に好かれていないのはわかっていた。
それでもこんな意地悪をされるなんて・・・

「課長、お茶です」
「ああ、ありがとう」

このタイミングで新人女子社員がお茶を運んできた。
今時上司のお茶くみなんて時代錯誤もいいところ。
うちの会社でもコーヒーもお茶もセルフなのに、この課長にだけは通用しない。

「文句を言う前にお茶の一杯でも入れてみろ」
これは私に向けられた言葉。

悔しいけれど、これが現実。
逃げ出す私が悪いんだからと諦めようとした時、声がかかった。
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