年下男子
「えっと、2人は・・・」
その場にいた取締役たちが私と修平君を交互に見ている。

「加山主任?」
営業部長も、どういうことだと私に聞いている。

困ったな。
これも修平君の意地悪の一つだろうか?
そりゃあね、修平君は異動でこのフロアを離れるし、私も数日で会社を去るんだからどんな噂を流されても困ることはないけれど、それにしたって・・・

「どういうことだ?」
しばらく沈黙が続いた後、口を開いたのは修平君のお父様である社長だった。

さすがにマズイと私も言い訳しようとするけれど、こんな時に限って何も思い浮かばない。

「彼女は営業2課主任の加山蘭さんです」
修平君がごく普通の当たり障りない紹介したのをよかったとホッとした瞬間、
「彼女とは個人的にも親しくお付き合いさせていただいています」
大きな、大きな爆弾を落とされた。

「「えぇー」」
フロアから上がる悲鳴のような声。

「ですよね、蘭さん」
ニッコリとほほ笑む修平君の笑顔が今は悪魔に見える。

恐るべし御曹司。
策士宮田修平に、完全にやられてしまった。
これで私と修平君の関係は周知の事実。これからきっと大騒ぎになるのだろう。
そして、私はもう逃げられないのだろうな。

「もうしばらくの間ですが、蘭さんをよろしくお願いします」
わざわざ周囲の同僚たちに声をけてフロアを出ていく修平君。

「加山主任、後で話そう」
私は部長に肩を叩かれて、うなだれた。
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