年下男子
その後は本当に大変だった。
みんなが次々に私のもとにやってくるし、親しい同僚たちは興味津々に聞いてくる。
常に周囲からの視線を感じながら過ごすことになった。
ただ不思議なことに、意地悪や嫌味を言われることはなかった。
きっとそれは修平君がみんなの前ではっきりと宣言してくれたからなのだろうと思う。


「時の人だな」
少し息をつきたくて自販機まで行った午後の時間、順が声をかけてきた。

「おかげさまで」
つい嫌味っぽい返事になってしまう。

「王子様にあそこまでの覚悟を見せられたら、誰も文句は言えないわな」
「はいはい」
全ては私のせいです。

「おめでとう」
「え?」
驚いて声に出た。

「あのくらい強引に行かないと、蘭は動けないだろ?」
「そんなこと」
ないとは言えない。

「王子様はわかっていて外堀を固めたんだよ」
「そうかなあ」
私は半分意地悪されたような気がしているけれど。

「じゃあ、お前は嫌だったのか?」
「うんん」
うれしかった。

きっと、年下だから御曹司だからと自分の気持ちをごまかしていた。
こんなきっかけがなかったら、ずっと逃げ続けていただろう。

「幸せになれよ」
「うん、ありがとう」

「ご心配は無用です。僕が幸せにしますから」
どこからともなく現れた修平君が、私と順の間に立つ。

「はいはい、そんな顔するな。もう蘭には近づかないから」
順が両手を上げて降参のポーズをしてから、仕事に戻って行った。

「ちょっと目を離すと、油断も隙もないな」
「もう、修平君ったら」

どうやらこの王子様はかなり嫉妬深いらしい。
「後で覚悟しておいてね」なんて捨て台詞を残して去って行く修平君に不安を感じながら、私はもう一度恋をしてみようと覚悟を決めた。


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