年下男子
会社では「加山主任」「宮田君」と呼び合い、仕事以外の話をすることも一緒にランチに行くこともない。当然お互い敬語で話すし、感情的になることもない。
しかしこうしてうちに来た時には、宮田君は私のことを「蘭さん」と呼び結構遠慮なくものを言う。だから私もつい本気になって言い合いになることもある。

「ねえ蘭さん」
私がキッチンまで逃げだしたのを追いかけてきた宮田君が私の前に回り込んできた。
「何よ」
「仕事以外にも、何か心配事があるんじゃないの?」
「べ、別にないわよ」
反射的に答えてしまったけれど・・・

「本当に?」
「ええ」
言いながら、目を合わせられずにそらした。

勘のいい宮田君のことだから、私の嘘に気づいたのかもしれない。
それでも今は何も言えないから、ごまかすしかなかった。
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