年下男子
「田中君、商品の到着は確認したのよね?」
ちょうどその場にいた担当者に声をかけた。
「ええ、すべては無理なので毎日運ぶことになっています」
「え?」
ちょっと待って。今すごく嫌な予感がした。

「イベント用の商品は今日そろえて会場に積む約束だったよな?」
「え、ええ」

課長のこめかみに青筋が見える。

「田中君、商品の納品予定を見せて」

入社4年目。
人当たりがよくて営業向きの田中君は売り上げもいい。
ただ欠点は少し雑なこと。
今回も売り場担当者に了承を得たって言うけれど、口約束だけでは何の効力もない。

「全体の3分の1しか納品してないの?」
「ですからそれは担当者と」
「わかった、もういいから」
これ以上聞いていたら私が切れそう。

「加山主任、君の責任だからな。明日はテレビの中継が入るそうだから、今日中に何とかしろ。いいな」
「・・・はい」

終いには「だから女は」なんてブツブツ言いながら課長は出ていった。
一方私は、「田中君を信じて確認をしなかった私にも責任はある。いつもなら必ずチェックするのにしなかった私が悪い」そう自分を納得させても気持ちが収まらない。

「丸越デパートの件は私が処理するから、田中君は手を出さないでちょうだい」
とうとう部下の前で叫んでしまった。
< 7 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop