年下男子
営業なんて仕事は男の世界。
だから「女なんて」って言われないように人一倍努力してきた。
ズルなんてせずに、正直に仕事をしてきた。
それなのに・・・
「はあぁー」
ため息が声になってしまった。

丸越デパートのイベントは半期に一度のもので、規模も大きい。
大きなイベントホールを貸し切ってやるからには商品のボリュームだって必要になる。
そのことが田中君にはわかっていなかったのだろう。

「どうするんですか?」
たまたま自販機の前で一緒になった宮田君が、心配そうに声をかけてきた。

きっと朝の騒動が色々なところで噂になっているのだろう。

「大丈夫よ、何とかするわ」

だてにこの仕事を10年以上続けてきたわけじゃない。いざとなれば方法はある。

「よかったら俺が」
「いいえ、結構よ」

たとえ強情だと言われても、宮田君に頼ることはできない。
それは私の小さなプライド。

「わかりました。何かあれば言ってください」
「ありがとう」

さあどうしたものか。
方法はいくつかあるけれど・・・
結局、私は一番ずるい手段を選択してしまった。
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