ヤンデレ令嬢、大好きだった婚約者とサヨナラします!
マーヴィンはベアトリスを脅すように言葉を投げかける。

しかし、それは想定内であった。
マーヴィンは追い詰められれば必ず「慰謝料」と口にするだろうというのは予測済みである。

金に困っている公爵家だからこそ、マーヴィンもお金に執着してくると思っていたのだ。
マーヴィンは完全に会話の主導権を奪い返したかと思っているのか、高圧的な言葉が口から次々に飛び出していく。

しかしベアトリスは、この時を待ってましたといわんばかりに、とある紙をテーブルに叩き付ける。


「婚約時にお父様が用意して下さったものですわ」

「‥‥は?」

「この部分をよく読んでくださいませ」


シセーラ侯爵は今でいう婚前契約書ならぬ婚約契約書のような書類を作っていたのだ。
主にセレクト公爵家への援助の金額や支度金の額が書き込まれている。
しかしその内容は一方的なものではなく、シセーラ侯爵からも提示されている。
それは娘を溺愛しているシセーラ侯爵らしいものだった。
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