継母に永遠の眠りの呪いを掛けられましたが、解呪の力を持つ婚約者が訪れることなく二百年の月日が流れて、自力で目覚めた姫は私です。
おとぎ話。
*
むかし、むかし。そう遠くないむかし。
ある国の王と王妃の間に、世界で一番美しく愛らしい姫が産まれました。
肌な初雪のように白く透き通り、唇は熟れた真っ赤な林檎のように潤い、艶やかな黄金の髪を靡かせるその姿はまるで妖精のように美しいものでした。
城の者からも民からも愛される姫は、自分の容姿に鼻にかけることもなく、ただ優しく見守る皆へ朗らかに笑顔を振りまいては、国に幸せを運んでいました。
流れる幸せはいつまでも続くもの……そう誰もが思っていました。
ある日突然、王妃が不治の病にかかり床に伏せ、幸せに包まれていた国は傾き始めます。
姫が苦しむ王妃の姿を見て、笑顔を失ってしまったのです。
毎日のように部屋を訪れては、看病を手伝うものの、か細い声で名前を呼んでくれる王妃に涙が止まりませんでした。
世界中の名医を呼び集めても治ることがない王妃の病は急速に体を蝕み、もう二度と姫の名前を呼ぶことも、温かな手で頭を撫でることもなくなりました。
悲しみが国中を包み込み、姫もまた深い深い悲しみに溺れました。
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