継母に永遠の眠りの呪いを掛けられましたが、解呪の力を持つ婚約者が訪れることなく二百年の月日が流れて、自力で目覚めた姫は私です。
罪悪の魔女で継母であるグレス王妃が私に妬みと恨みの感情から突如掛けてきた呪いは、永遠の呪いという厄介なものだった。
呪いを掛けられてからというもの、意識は完全に暗闇に落ちることはあまりなく、聞こえてくる声や音で何かと情報収集をして日々過ごしていた。
周囲の声を聞いて分かったことは、呪いを解く方法は解呪の力を持つ者からのキスをされることで眠りから解放されるというものだった。
それもその力を持つのが、婚約者の隣国の第一王子のマルキアス王子。
最初は一回しか顔合わせしていない婚約者にファーストキスを捧げてなるものかと強く願っていたけど、一度きりの人生寝たまま終わってしまうのは勿体ないと、意を決して待っていた。
眠りから覚めて、気まずさでマルキアス王子に何も言えないのは失礼に値すると、目覚めた時の第一声をひたすら考えながら、ずっっと待った。
待って、待って、待ち続けて――。
「二百年待っても来ないなんて、あの人を信じた私が馬鹿だったわよ」
目覚めて憎みたいマルキアス王子の顔も思い出せない程、長い時間が経過していた。
呪いのせいなのか魔力のせいなのかは定かではないけれど、呪いを受けた当時の年齢のまま姿形も変わっていなかった。
だけど外に広がる世界は、私が暮らしてきた世界とは全く異なる世界に進化を進めていて、くだらない戦争のせいで世界地図は大きく変わっていたのを知った時は、ずっと寝ていたのにショックで二日も寝込んだ。
その後探索した森の片隅で見つけた古めかしいゴシップ誌によると、マルキアス王子は一番上の妹と駆け落ちしたらしい。どうりで私を起こしに来ないわけよね。
おまけに魔法という文明は廃れ、化学なるもので世界は革命を起こして行ったらしい。
馬車じゃなくて、鉄の馬が物凄い速さで走るのよ?そんなの直ぐに受け入れられるわけないじゃない。
お母様が大好きだった母国も、可愛いと褒めてくれた民や城の皆も、お父様も……皆もうどこにもいない。