竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
 リアンがアイリスに己の逆鱗を預けた意味。
 それは彼女に竜の加護を与えるためだ。

 竜の逆鱗を持っていれば、力の弱い魔族はアイリスに近寄ることすら出来ない。
 魔族は本能的に竜人を避けるように出来ている。下手に手出しすれば無事では済まないし、種族が滅びる可能性だってあるからだ。
 仮に少し力のある者が襲ってきたとしても、アイリスを守れるよう、リアンは逆鱗に魔力を込めていた。

 けれど、相手がリアンと同等かそれ以上の手練れだとすれば話は別だ。
 逆鱗に込められた魔力はあくまで限定的だし、真面にやり合って勝てる自信があるからこそ、アイリスを攫おうなどと考えられるのだろう。


「それで、心当たりは?」

「――――ある」


 眉間に皺を寄せ、リアンは応える。

 もしもリアンが想像したとおりの人物が犯人だとすれば、アイリスを取り戻すのは相当厄介だ。
 一筋縄ではいかないし、下手すれば相打ち。少なくとも無事ではいられないだろう。


「アイリスを迎えに行く」


 けれど、リアンの答えは最初から決まっていた。
 アイリスがいなければ、リアンの帰る場所等どこにもない。
 もしもアイリスが無事じゃないなら、リアンの命等それこそどうでも良くなる。迷う要素なんて一つもなかった。


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