竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
 ここに到着した時、彼は明らかにリアンのことを侮っていた。
 リアンでは父親に傷一つ付けることができない――――そう確信していた。

 けれど今、リアンに組み伏された父親の瞳には、戸惑いと恐怖が見え隠れする。この数百年、地位・力共に誰からも脅かされることがなかった男が、呆気なく膝を突き、その全てを奪われようとしている。


「リアン――――何故だ? おまえには何も……この世への執着など何一つなかった。いつ死んでも良いという瞳をして、死んだように生きてきたおまえが、どうして今更……」

「今更、じゃない」


 リアンにとっては、アイリスがこの世に生を受けた時――――いや、アイリスに出会えた時こそが、現世の始まりだった。
 アイリスに出会うまでに過ごした百年は、彼の父親が言う通り、死んだように生きてきたように思う。ただ生命を維持するだけ。それすらも億劫と思えるほど無意味な時間。

 けれど、アイリスに出会い、リアンは自分が生まれてきた意味を知った。
 アイリスはリアンの命そのもの。彼女を守るために生まれてきたんだと、出会った瞬間に分かった。


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