竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
「でもさ、あんなにいっぱい撫でてくれてたんだよ? たくさんギュッてして、手も繋いで……それなのに、さ」


 言いながら目頭がツンと熱くなった。
 今でも頭や手のひらに、旦那様の温もりが残っている。ギュッてされたときの幸福感が心をときめかせる。
 これじゃ完全に生殺しだ。
 折角、ようやく、大人になれたのに。


「そんなに気に病む必要ないと思うなーー。アイリスちゃんの憂慮は、どうせ、あと数十分で片がついちゃうものなんだから」


 そう言ってニコラスは悪戯っぽく笑う。わたしはムッと唇を尖らせた。


「数十分? まさか。2年近くも悩んでるんだよ?」


 そんなに簡単な話なら、端から悩んだりしない。


「「2年近く悩んでいても、だ」」


 だけど、ニコラスとアクセスは二人してそう断言した。あまりにも自信満々な二人の様子に、わたしは首を傾げる。何だか釈然としなかった。


< 153 / 245 >

この作品をシェア

pagetop