竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
「心配なのもあるけど」


 旦那様はそう言って、わたしの顔をまじまじと見つめながら息を吐く。そのまま、首を傾げたわたしの頬にそっと静かに頬を寄せた。


「俺は毎日アイリスに会いたいから」


 その瞬間、わたしは大きく飛び上がった。心臓が直接撫でられたかのように騒めき、身体中の血液が沸騰する。旦那様はそんなわたしの身体を支えながら、愛し気な笑みを浮かべている。もしかしたらフィルターが掛かっているだけなのかもしれないけど、少なくともわたしにはそう見えた。


(わたしだって、旦那様に毎日会いたい)


 心臓がバクバクと鳴り響いている。本当は今すぐに大好きだって伝えたい。結婚してって叫びたい!
 だけど、こんな所で、こんなタイミングで『好き』って伝えても、旦那様に十分に伝わるとは思えない。勢いで言ったって思われたくないし、一世一代の告白だもの。シチュエーションとか言葉とか大事にしたい。今更ながら、そう気づかされた。


「だから一緒に帰ろう?」


 旦那様はそう言って、そっとわたしの手を握る。旦那様の手のひらは、二年前と変わらず、大きくて温かかった。優しくて、いつまでも触っていたくなる、そんな手のひらだ。まるで心臓が手のひらに移動してしまったかのように、ドキドキと脈打っているのが分かる。わたしは旦那様の手を握り返した。


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