竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~

36.きずな君の記憶②【初めてのお出掛け】

「きずな君!」


 朝、俺を見つけた逢璃が、嬉しそうに駆け寄る。


(可愛い)


 逢璃を撫でながら、俺は深々とため息を吐く。

 付き合い始めたら、強すぎるこの想いも少しぐらいは和らぐだろう――――そう思っていたが、全然だった。寧ろ日々、恐ろしいほどの勢いで強くなる。


「あのね、朝にきずな君に会えたら、その日一日、物凄く幸せなんだ! だから、会えて良かった」


 そう言って逢璃は幸せそうに笑う。


(可愛い)


 本当は、今すぐ抱き締めたいほど可愛かった。けれど、同じ学校の連中でごった返した道の往来で、そんなことが出来る筈もない。己の願望をため息にして、俺は逢璃を更に撫でる。


「どうしたの? さっきからため息ばかり吐いて」


 逢璃はそう言って小さく首を傾げる。そんな些細な仕草すら可愛くて、困った。


「逢璃が可愛すぎて辛い」


 素直にそう白状すると、逢璃は途端に顔を真っ赤に染め、恥ずかし気に俯く。


「またそういう可愛いことを――――」


 言葉にし掛けて、止めた。
 だってもうきっと、何をしたって逢璃は可愛い。俺達は手を繋いで、学校に向かった。

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