竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
「んっ……」


 俺は夢中で逢璃の唇を塞いだ。初めて触れる彼女の唇は、あまりにも柔らかく、甘い。
 逢璃と出会うまで空っぽだった心と身体が、彼女のおかげで満たされていく。


(俺はきっと、逢璃に出会うために生まれてきたんだ)


 そう確信できるほど、俺には逢璃しか見えなくなっていた。
 何度も何度も角度を変えて唇を重ねながら、逢璃をきつく抱き締める。すると逢璃は慌てた様子でトントンと俺の胸を叩いた。気づけば観覧車が、随分下の方に降りてしまっている。


(まだ足りないのに)


 内心残念に思いながら唇を尖らせる俺を見て、逢璃がクスクスと笑った。


「きずな君、実はね。この観覧車には言い伝えがあるんだ」

「言い伝え? 一体どんな?」


 サッパリ見当が付かずに首を傾げると、逢璃は穏やかに目を細める。

 
「この観覧車の一番上で初めてのキスを交わした恋人達は、ずっと一緒に居られるっていう定番の奴」


 そう言って逢璃は俺のことをギュッと抱き締めた。心臓がドキドキと鳴り響く。


「叶うと良いなぁ」


 蚊の鳴くような声でそう囁く逢璃を、俺はきつく抱き締める。


「――――俺が叶えるよ」


 言えば逢璃は嬉しそうに笑う。
 絶対、と心の中で付け加えて、俺は満面の笑みを浮かべた。


「ねぇ……もう一回乗らない?」


 ゴンドラから降りながら、逢璃がそう尋ねる。


「もちろん」


 一回といわず、何度でも。
 閉園時間ギリギリまで、俺達は観覧車に並び続けた。
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