竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
「きずな君――――わたしがどうして怒ってるのか、分かってる?」


 問われて、俺は驚きに目を見開いた。


「そ……れは…………」


 正直言って俺は、逢璃が何故怒っているのか、その理由をきちんと考えていなかった。彼女に許してほしいと、そのことばかりを考えていた。逢璃はそんな俺の考えを見透かしていたのだ。


「わたし、きずな君には自分自身の人生を大事にしてほしい」


 逢璃はそう言って俺の手を握った。久々に感じる逢璃の温もりに、目頭がグッと熱くなる。


「きずな君がわたしのことを大事に思ってくれてるのは分かってる。だけど、わたしのために何かを諦めたり、変えたり――――そういうのは嫌だよ。ちゃんと、きずな君自身を大事にしてほしい」


 気づけば逢璃はポロポロ涙を流していた。


「ごめん……ごめん、逢璃」


 今ここに誰もいなくてよかった。泣きじゃくる逢璃を抱き締めながら、俺はそんなことを思う。


「ちゃんと考えるから――――だから、俺と仲直りしてほしい」


 逢璃はしばらく悩んだ挙句「うん」と小さく呟いた。
 喧嘩らしい喧嘩をしたのなんて、あれが初めてだった。



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