竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
 ここなら誰に見咎められることも無い。人目を憚ることなく、逢璃を抱き締められる。
 時刻は22時。俺達しかいない室内に、時計の針の音が響く。


「――――そろそろ送るよ。あんまり遅くなると危ない」


 俺はそう言って逢璃を撫でる。
 逢璃は少しだけ目を丸くし、それから唇を引き結んだ。不満がある時の、彼女の癖だ。
 ちゅっ、と触れるだけのキスをして、俺は逢璃を腕の中から解放する。これ以上は危険だ。俺の理性がもたない。


「――――――もう少し、一緒に居たい」


 言いながら、逢璃は俺をキツく抱き締めた。心臓がバクバクと鳴り響く。喉の奥が熱く、何かがせり上がってくるような感覚がした。


「明日も会えるよ。今度は俺が会いに行くから」


 大学が始まるまであと数日。
 それまでは互いの家の片づけや、逢璃のバイト探しをしながら、ゆっくり一緒に過ごせば良い。


「そっか……分かった。好きだよ、きずな君」


 逢璃が俺の胸に顔を擦りつけながら呟く。心臓と身体が燃えるように熱い。


「俺も、逢璃が好きだよ」


 欲望に声が掠れる。
 本当に、どうしようもないほど、逢璃が好きだ。



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