竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
 大学生活が始まって以降は、お互い忙しく過ごしていた。
 逢璃は大学の合間、週五日アルバイトをしている。慣れない一人暮らし、学校生活を送りつつも、少しでもご両親の金銭的負担を減らしたいのだと言う。


「社会勉強にもなるしね」


 そう言って逢璃は笑うけど、逢璃の世界が広がることは、俺にとって恐怖の対象だった。
 天真爛漫で可愛らしい逢璃のことだ。大学でもバイト先でも、男たちの気を引くことは間違いない。
 もしも俺ではない、誰かを好きになってしまったら――――そう思うと不安で仕方なかった。

 俺は毎日、バイト帰りの逢璃を迎えに行った。名目は『夜遅くて危ないから』だけど、当然目的はそれだけじゃない。逢璃には俺がいるのだと、他の男を牽制したかった。


「こんなに毎日、大変じゃない?」


 俺が迎えに来るたび、逢璃は言う。


「ちっとも大変じゃないよ。ここに来れば逢璃に会えるし」


 欲を言うなら、いつでも何処でも、俺は逢璃と一緒に居たかった。
 当然、叶わぬ願いだと分かっているけど、それでも。


「ねぇ、今夜は家に上がって行ってよ」


 部屋の前まで送り届けると、いつものように彼女はそう口にする。


「送ってもらったのに、お茶の一つも御馳走できないなんて寂しいもん」


 俺の服の裾をギュッと掴んで、逢璃は上目づかいで俺を見つめる。
 その途端、胸を掻きむしりたくなるような強い欲望が俺を支配した。


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