竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
「――――――明日提出のレポートをそのままにしてきたから」


 苦し紛れの嘘だった。
 そんなもの、本当はとっくの昔に終わっている。


「そっか……分かった。ごめんね、わがまま言って」


 逢璃はそう言って寂しそうに笑う。本当はこんな顔をさせたい訳じゃない。
 けれど俺は、彼女を傷つけることが怖い。傷つけて、幻滅させて、俺から離れて行って欲しくない。
 自分でも信じられないほど、醜くて浅ましい欲。


(逢璃がほしい)


 逢璃に俺だけを見てほしい。俺だけを求めてほしい。
 彼女の全部に触れて、キスして、俺の名前しか呼べないように、めちゃくちゃに――――自分だけのものにしたかった。

 逢璃が俺との関係を進めたいと思ってくれていることは分かっている。
 けれど、それはきっと俺と同じ気持ちじゃない。
 臆病者の自己保身だと分かっていても、どうしても踏み込むことができなかった。


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