竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
時が経って、俺達は社会人になった。
逢璃は大手企業の広報担当部署に、俺はとある省庁の総合職として、それぞれ配属された。
「きずな君、忙しそうだね」
運悪く、俺が配属された部署は忙しかった。毎日終電が無くなるまで仕事をし、家には寝に帰る様な生活。当然、逢璃とゆっくり会話ができる時間すらない。
それでも逢璃は、毎晩俺のために食事を作ってくれた。先に眠って貰う日も多かったが、直筆の手紙が添えられた彼女の食事は、俺の大きな活力源だった。
「――――転職しようかな」
朝。スーツに着替えつつ、ぼそりとそう呟く俺に、逢璃はクスクスと笑い声をあげる。
「わたしに会えないから――――――そんな風に思ってる?」
「うん。それ以外に理由なんてない」
俺にとっては逢璃が全てだ。適性があるからと選んだ仕事だが、逢璃に会えないんじゃ意味がない。
「――――わたしも、きずな君に会えなくて寂しい」
それは思わぬ返答だった。『わたしは平気だから』と、そう言われるとばかり思っていた。
けれど逢璃は俺のネクタイを結びつつ「でもね」と、そう言葉を続ける。
「寂しいけど、わたしも頑張る。だから、きずな君ももう少しだけ頑張って」
そう言って逢璃は、俺の頬に触れるだけのキスをした。
「……うん」
普通に『頑張れ』と言われるより、ずっと元気が湧いてくる。俺は逢璃を抱き締めながら、底知れぬ幸福感に包まれていた。
逢璃は大手企業の広報担当部署に、俺はとある省庁の総合職として、それぞれ配属された。
「きずな君、忙しそうだね」
運悪く、俺が配属された部署は忙しかった。毎日終電が無くなるまで仕事をし、家には寝に帰る様な生活。当然、逢璃とゆっくり会話ができる時間すらない。
それでも逢璃は、毎晩俺のために食事を作ってくれた。先に眠って貰う日も多かったが、直筆の手紙が添えられた彼女の食事は、俺の大きな活力源だった。
「――――転職しようかな」
朝。スーツに着替えつつ、ぼそりとそう呟く俺に、逢璃はクスクスと笑い声をあげる。
「わたしに会えないから――――――そんな風に思ってる?」
「うん。それ以外に理由なんてない」
俺にとっては逢璃が全てだ。適性があるからと選んだ仕事だが、逢璃に会えないんじゃ意味がない。
「――――わたしも、きずな君に会えなくて寂しい」
それは思わぬ返答だった。『わたしは平気だから』と、そう言われるとばかり思っていた。
けれど逢璃は俺のネクタイを結びつつ「でもね」と、そう言葉を続ける。
「寂しいけど、わたしも頑張る。だから、きずな君ももう少しだけ頑張って」
そう言って逢璃は、俺の頬に触れるだけのキスをした。
「……うん」
普通に『頑張れ』と言われるより、ずっと元気が湧いてくる。俺は逢璃を抱き締めながら、底知れぬ幸福感に包まれていた。