竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
(それにしても)


 旦那様が竜人だなんて素敵すぎる。あの美しさ、高潔さ、完全無欠さや神秘的な所とか、何処を切り取ってみてもピッタリだ。
 元々人外の美しさを誇っていた旦那様だけど、実際に人ならざる存在になって、更に神がかった感じがする。拝みたくなるほど綺麗。っていうか、実際に拝んでしまう。わたしが見つめ過ぎて、いつ穴が空いても不思議じゃないくらいだ。


「美味いな」


 その時、旦那様がポツリとそう漏らした。その表情はめちゃくちゃ優しくて、穏やかで、それでいて可愛い。心臓がキュンキュン音を立てて高鳴った。


「良かったです! 頑張った甲斐がありました!」


 わたしはそう口にしながら満面の笑みを浮かべた。
 実際問題、記憶があっても、身体は思う様に動いてくれないもので。野菜を切るにしても、鍋の中身を混ぜるにしても、昔みたいに上手くできなかった。味付けだけは、前世で旦那様が『美味しい』って言ってくれた時の記憶を元に必死で再現したけど、結構苦労したのだ。


「――――頑張ってくれたんだな」


 旦那様はそう言って、わたしのことを撫でてくれた。あぁ……なんかもう、今死んでも本望かもって思うぐらい幸せで、嬉しくて、頬が熱くて堪らない。


「それはもう! アイリス様はリアン様のために、それはそれは一生懸命、料理を作っていらっしゃいました」


 感無量で口が利けないわたしのために、ロイがそう口にする。
 ロイは思う様に作業の進まないわたしのために、色々なことを手伝ってくれた。正直、ロイがいなかったらわたしは最後まで料理を作れなかったかもしれない。前世の知識で無双するなんて、現実には中々難しいのだ。


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