竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
 出棺の日。
 逢璃の棺には、結婚式で着る筈だった真っ白なドレスが一緒に納められる。


「逢璃……綺麗だ…………」


 棺の中で笑う逢璃はこの世の中の誰よりも、何よりも綺麗だった。本当に愛おしかった。
 そこから先はもう、殆ど何も覚えていない。誰の目にも明らかな程、俺は空っぽだった。



 夜風に吹かれながら、俺は膝を抱えていた。
 目の前には穏やかで、けれど深い闇が揺れる。感覚という感覚を失った俺の鼻にも、微かに潮の香りが届いた。


「逢璃」


 何度呼んでももう、逢璃はこの世にはいない。既に身体は失われ、骨だけになってしまった。骨壺からこっそりと逢璃の骨の一部を持ち出し、俺は自分の懐に隠していた。娘を失ったばかりの逢璃の両親から全てを奪うわけにはいかない。それは、俺に残された最後の理性だった。


『きずな君!』


 遠くの方から逢璃の声が聞こえる。何度呼び掛けても返事のなかった逢璃の声が、俺の心に直接響いた。


『きずな君、大好き!』


 逢璃がそう言って目を細める。

 俺も好きだよ。好きだ。一生――――死んでも、逢璃だけを愛している。


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