竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~

41.旦那様の心臓

 ハッと大きく息を吸い、わたしは身体を震わせた。

 視界が暗い。ニコラスがわたしの目を覆っている。
 だけど、彼の手のひらは、わたしの涙でぐちゃぐちゃになっていた。


「――――どうやら、戻って来たみたいだね」


 暗闇の向こうでニコラスが言う。
 苦しい。嗚咽が漏れ、まともに息ができなかった。

 わたしの目を覆い隠したまま、ニコラスとアクセスがゆっくりと身体を起き上がらせる。背中を擦ってもらいながら、わたしは涙を流し続けた。


「きずな君」


 呼んだところで、きずな君にわたしの声が届くわけじゃない。だけど、きずな君は最後の最後まで、わたしのことを求めていた。


「きずな君……!」


 叫ばずにはいられない。頭がぐちゃぐちゃで、ひどく苦しかった。

 彼があれ程までにわたしを想ってくれていたことも。自分の最期も。最後に彼をあんな風に死なせてしまったことも。わたしは全部、全部知らなかった。


「ごめんなさい、きずな君……! ごめんなさいっ」


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