竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
「実はね……私の夫は人間なの。もう何年も―――二百年以上も前に亡くなってしまったのだけど」
懐かしそうに、愛しそうに微笑むミセス・カルバートに、わたしは小さく息を呑む。彼女に目が釘付けになり、心臓が早鐘を打った。
「聞いたわ。アイリスちゃんは、竜人と結婚するのよね」
「はい……」
感情が一気に湧き上がり、上手く言葉が出ない。
どうして『人間』を好きになったのか。どうして結婚を決断できたのか。
辛くはなかったか。今、寂しくはないのか――――――色んなことが、聞きたくて堪らない。
それが、とても失礼なことだと分かっているけれど。
「私はね、正直言って何も考えていなかったの。ただ、あの人と一緒になりたかった。だって、麟族として生まれてきたのだもの。前世で自分の欲を捨てた一族だからこそ――――現世ではきちんと、自分の欲に忠実に生きたいと思ったのよ」
ミセス・カルバートはわたしが何を知りたいのか、分かっているみたいだった。心臓がドクン、ドクンと鳴り響く。ゴクリと唾を呑み込むと、ミセス・カルバートはまた、徐に口を開いた。
「彼と私が違うんだって本当の意味で気づいたのは、結婚した後のことだったわ。私よりもずっと早く老いていく夫を見ながら『私は彼に置いて行かれるんだ』って、ようやくそう気づいたの。同じ種族同士の夫婦ならば、一人になるのは長くて十年やそこらかもしれないけど、私達の場合は二百年。途端に私は怖くなったわ。一人になるのが怖かった。だけどね――――」
そう言って、ミセス・カルバートは屋敷の中をゆっくりと見回す。わたしも一緒になって彼女の視線を追った。
懐かしそうに、愛しそうに微笑むミセス・カルバートに、わたしは小さく息を呑む。彼女に目が釘付けになり、心臓が早鐘を打った。
「聞いたわ。アイリスちゃんは、竜人と結婚するのよね」
「はい……」
感情が一気に湧き上がり、上手く言葉が出ない。
どうして『人間』を好きになったのか。どうして結婚を決断できたのか。
辛くはなかったか。今、寂しくはないのか――――――色んなことが、聞きたくて堪らない。
それが、とても失礼なことだと分かっているけれど。
「私はね、正直言って何も考えていなかったの。ただ、あの人と一緒になりたかった。だって、麟族として生まれてきたのだもの。前世で自分の欲を捨てた一族だからこそ――――現世ではきちんと、自分の欲に忠実に生きたいと思ったのよ」
ミセス・カルバートはわたしが何を知りたいのか、分かっているみたいだった。心臓がドクン、ドクンと鳴り響く。ゴクリと唾を呑み込むと、ミセス・カルバートはまた、徐に口を開いた。
「彼と私が違うんだって本当の意味で気づいたのは、結婚した後のことだったわ。私よりもずっと早く老いていく夫を見ながら『私は彼に置いて行かれるんだ』って、ようやくそう気づいたの。同じ種族同士の夫婦ならば、一人になるのは長くて十年やそこらかもしれないけど、私達の場合は二百年。途端に私は怖くなったわ。一人になるのが怖かった。だけどね――――」
そう言って、ミセス・カルバートは屋敷の中をゆっくりと見回す。わたしも一緒になって彼女の視線を追った。