竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
「この日が来るのを、ずっと待ってた」


 旦那様は手を伸ばしてわたしを出迎え、ギュッと力強く抱き締める。アイリス、と何度も何度もわたしの名前を呼ぶ。
 わたしはゆっくりと頷いた。


「こら、誓いの言葉がまだだろう?」


 神父役を引き受けてくれたニコラスが、呆れたような声音を漏らす。恨めしそうな表情でニコラスを睨む旦那様の手をわたしは握った。


「さぁ、旦那様」


 旦那様は幸せそうに目を細め、わたしと額を重ね合わせる。胸が熱く、ドキドキと鳴った。


「新郎リアン――――、あなたは病める時も健やかなるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


 ニコラスが尋ねる。旦那様はわたしのことを真っ直ぐに見つめ、「誓います」とそう口にした。


「新婦アイリス――――、あなたは病める時も健やかなるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、夫を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


 今度はわたしに向かってニコラスが問いかける。
 わたしはゆっくりと深呼吸をした。


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