竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
 それにしても、一体いつの間にこんなに準備したんだろう。
 今日の旦那様は、わたしの両親のためにお墓を準備して、わたしの家から服や小物を取ってきて、わたしのために新しいお洋服を準備して、お部屋の準備をして……って聞くだけでへとへとになりそうなことを全部実現してくれた。
 全部全部、わたしのために。そう思うと涙が出てくる。


「おやすみ、アイリス」


 旦那様はわたしを優しく抱きしめてから、そっと部屋を後にした。ミントみたいな爽やかな残り香がふわって漂って、心まで洗われるみたいで。


(本当、邪なことばかり考えて申し訳ございません!)


 旦那様の去っていった方角を拝みながら、わたしはため息を吐く。

 正直、旦那様は今のわたしを『女性』と認識しているとは思えないし、そういう気が無いのは分かってたんだけど。でもねぇ、大好きな旦那様が側で寝ていて、平常心でいられる自信は無い。
 好きって言いたくなるし、大好きって言いたくなるし、ギュッて抱き締めたくなっちゃうし、ドキドキして眠れなくなっちゃうかもって。


(良かった。わたしの部屋を用意してもらえて)


 旦那様の優しさが、物凄く身に染みた。本当に、わたしには勿体ないほど素敵な旦那様。
 そんなことを考えながら、わたしはベッドに横たわる。すると、疲れが溜まっていたせいか、すんなりと睡魔が降りてきた。


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