竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
(……ん?)
その夜、わたしは誰かの視線を感じて目を覚ました。いや、正確には目は開けないまま、感覚だけ起きたというべきか。
(もしかして、旦那様?)
感じる眼差しが優しくて、眠ったふりをしながら、わたしはそっと微笑む。
すると、大きな手のひらが、わたしの頭を優しく撫でた。心臓がキュンキュン音を立ててときめいて、頬も紅く染まってしまう。暗いからよく見えないのが幸いだった。
「…………可愛い」
(え?)
それは紛れもなく、旦那様の声だった。めちゃくちゃ小さかったけど、聞き逃しはしない。
(可愛いって言ってくれた! 旦那様が、わたしのこと、可愛いって!)
眠ったふりをしつつ、わたしの心の中は、興奮でとんでもないことになっていた。本当は今すぐ手足をバタバタさせて、高まった熱気を逃してしまいたい。身悶えるってこういうことを言うんだって身を以て知った。
「可愛い、俺のアイリス」
すると、一分も経たない内に、二回目の大きな爆撃がわたしを襲った。
(俺の……俺のアイリスって!)
リアルに心臓が爆発するかと思った。正直、爆発しても本望ってぐらいの状況だし、あまりにも衝撃的で色々とヤバイ。
(ねぇ、良いんじゃない? 今すぐ結婚しちゃって! ダメ? ダメかなぁ⁉ )
もしも旦那様が求婚してくれたら即イエスって答えるのにな、と思う。いや、十五歳になるまで結婚できないルールって知ってるんだけど!