竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~

9.街歩きとアイリスの望み

 屋敷の外に出て初めて知ったこと。
 それは、旦那様の屋敷から街までは結構な距離があるってことだった。


「落ちないようにちゃんとしがみ付くんだぞ」

「はい」


 答えながら密かに息を呑む。

 旦那様の背中に生える神秘的な色合いをした翼。見下ろせば地面が何メートルも先に見える。ビュービュー吹き付ける風に、『あぁ、わたしは今空を飛んでるんだなぁ』って思い知るし、異世界生活満喫してるなぁって思った。


「アイリス、怖くはないか?」


 わたしを大事に抱きかかえて、旦那様がそんなことを尋ねる。


「いいえ、ちっとも」


 答えながら、わたしはふふ、と笑う。
 美しい緑や川に囲まれた風景も土や草花、風の臭いも素敵だし、何より旦那様が抱きかかえてくれてるんだもの。不安なんて一ミリもなかった。

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