竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
「アイリス?」


 そんなことを考えていたら、旦那様がわたしのことを怪訝な表情で見つめていた。どうやら彼は後の二人の会話は聴いていないらしい。
 旦那様が悪いわけではないのに、何だか胸がモヤモヤする。


(わたしがもう少し大人だったらなぁ)


 この人はわたしのものです!って旦那様の腕をギュッて抱き締めて、そっと後を振り向いて、勝ち誇った笑顔でも見せつけられただろうに。今のわたしがそれをしたところで、『ちびっ子が独占欲を発揮している』だけにしか見えない。


「旦那様、わたし早く大人になりたいです」


 大人になって、旦那様の奥さんになりたい。いっぱいいっぱい大好きって言って、いっぱいいっぱい大好きって言われたい。キスもそれ以上のこともいっぱいして、旦那様はわたしのだって実感したいのに。


「……アイリスはアイリスだろう」


 少しだけ考えてから、旦那様はそんなことを言った。
 子どもでも、大人でも変わらない――――言葉にはしなかったけど、そんな風にわたしには聞こえた。


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