竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~

16.アクセスの待ち伏せ

 夕食を食べ終えてから、ニコラスとアクセスの二人はようやく帰っていった。


「驚いただろう?」


 いつも通りの平穏さを取り戻した屋敷。旦那様の声がポツリと響く。
 一瞬何が言いたいのか分からなかったけど、すぐに二人のことだって分かった。

 旦那様の頬は少しだけ紅く染まっている。恥ずかし気に寄せられた眉や、尖った唇が可愛くて堪らない。


「はい、正直ビックリしました」


 クスクス笑うわたしを、旦那様はそっと抱き締める。
 怖い思いをさせたことを気に病んでるのかな?よしよし、って優しく頭を撫でてくれた。


「……本当は悪い奴らじゃないんだ。アクセスはぶっきら棒だけど、根は優しい奴だし、ニコラスは軽薄だけど情に厚い奴で――――」


 ポツリポツリと旦那様が二人のことを話してくれる。聞きながら、なんだか胸が熱くなった。

 旦那様は、あんまり人づきあいが上手な方じゃない。だけど、一度自分のテリトリーに入った人間はすごく大事にする人だ。前世で中学時代からの親友を紹介してくれたときも、すごく優しい顔をして笑っていたのを覚えている。


(なんだかんだで、ニコラスとアクセスは旦那様にとって大事な友人なんだろうなぁ)


 だったら、わたしにとっても二人は大事な人だ。

 どんなにセクハラめいた発言をされても、碌に反応をしてくれなくても、旦那様の友人というだけで滅茶苦茶尊い。絶対的に尊いのだ。


「わたし、嬉しかったです」


 旦那様を見上げながら、わたしは笑う。
 その一言で旦那様には十分だったらしい。穏やかに目を細めて笑ってくれた。




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