竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
「何が幸せかは人によって違います。わたしは……わたしにとっては、旦那様と一緒にいることが幸せです。例え旦那様の恋愛対象になれなくても。
もちろん、想いが届いて、旦那様からも同じだけの想いを返してもらえたらもっと幸せでしょうけど……良いんです。今は旦那様が、側に居てほしいって言ってくれるだけで嬉しいから。側に居れる間は、図々しく居座りたいって思ってます」


 先のことなんて誰にも分からない。旦那様がいつまでわたしを側に置いてくれるのか、それすら分からないけど、側に置きたいと思ってもらうための努力は惜しまないし。ペットのことを溺愛して死ぬまで可愛がる人って一杯いるもん。もしも旦那様がそんな感覚だったとしても、全然構わない。許してくれる間は、死ぬ気で居座る。


「――――図々しいという自覚はあるのか?」


 アクセスはそう呟いて、クスリと笑った。鋭い眼孔が少しだけ丸く、柔らかくなっている。
 なんだかそれが嬉しくて。わたしも一緒になって笑う。


「はい! 全部分かっててやってます! わたし、図々しさについては自信がありますよ!」


 ドンと勢いよく胸を叩く。
 アクセスはわたしの頭をぐしゃぐしゃって撫でた。まだまだ言いたいことがあるって顔をしているけど、今日の所は追及しないことにしたらしい。
 お皿に残っていた生クリームを口に運びつつ、彼はもう一度小さく笑った。


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