竜人様に拾われました~転生養女は現世でも妻として愛されたい~
 その翌日。
 ニコラスの代わりに今度はアクセスがやって来た。


「アクセス、旦那様は? 元気にしてる?」

「……案ずるな。あいつはそんなにやわじゃない」


 そんな会話を交わしつつ、手土産のシュークリームを受け取る。
 いつお戻りになるか分からない旦那様のために、夕飯は余分に作ってある。アクセスを食卓に案内しつつ、わたしはホッと胸を撫で下ろした。


「あと数日は帰れないとの伝言だ」

「そう……。忙しいのね」


 ちゃんと食べているだろうか。眠っているだろうか。そんなことを尋ねたくなる。


(――――いや、旦那様のこと。寝るならきっと、一旦家に帰ってるだろうな)


 家と職場との往復時間が勿体ないから職場で眠る、なんて人も居るけど、旦那様は違う。
 帰ってこないのは、そもそも眠るつもりがないからなのだろう。


「――――まだ二日目だろう」


 アクセスはそう言って困ったように笑う。
 不安が顔に出ていたのかもしれない。わたしはブンブンと首を横に振った。


「分かってます。しばらく旦那様に会えないのは寂しいけど、ちゃんと留守を守りますから」


 旦那様に会えないのは、現世で出会ってから初めてのこと。めちゃくちゃ寂しくて堪らない。
 笑顔が見たい。声が聞きたい。アイリスって優しくわたしの名前を呼んでほしい。大きな手のひらでよしよしって撫でて貰って、ミントの香りに包まれたい。


(会いたい、会いたい! 会いたいよ!)


 すると、わたしの心の声が届いたのか、アクセスは小さくため息を吐いた。


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