空に飛んだら
昔の話
私が幼稚園の頃,父と母が離婚した。
性格の不一致だったらしい。
私は母に引き取られた。
父はいつも毛むくじゃらで,大きな手で私を撫でてくれていた。
それくらいしか覚えていない。
幼稚園児の記憶なんて,そんなものだろう。
アルバムを見ても,あぁ,そういえばこんな人だったな。と感じるくらいだ。
それから私は母の愛情だけを受け,成長した。
母は再婚をしなかった。
仕事を一生懸命して,いつも疲れた顔をして家に帰ってきた。
時々母しかいないことに寂しさを覚えたが,母はとても優しかったし,自分でも,寂しいと思ってしまうと母を悲しませてしまうということがわかっていたから,特に何も言ったりしなかった。