月下の君には秘密です。
いつの間にか、もう校内に残っている生徒もまばら。
静まり返った教室へ帰ると、
教室内には、
いつもの俺と逆の立場の君。
(…プラス小林。)
俺の姿を見つけると、
パッと明るい顔を見せた。
「…ぁ…お待たせ…?」
言い慣れない言葉に、
思わず疑問符が付いた。
「…あはは!聞き慣れない台詞!おかえり、晃ちゃん。」
予想通りの井上の反応に、俺からも笑みが溢れた。
その横で、
「…待った!待ったよ、アッキー!…で?それで?で~?」
小林は、
やっぱり小林だと思った。
だから無視と決めた。
「井上、帰ろー…」
俺はそう言いながら、
机の上に置いて行った自分のカバンを取ろうと手を伸ばした。
でも、
もう少しというところで、
小林に阻止される。
「―――…帰しません。帰しませんよ~、アッキー!」
「…だから、アッキー言うな…。なんでお前まで残ってるわけ!?そんなに俺と帰りたいかッ。」
そんな俺たちのいつものやり取りに、井上は楽しそうに笑っていた。