月下の君には秘密です。


俺が弁当箱を見つめていると、

「…え?何か言った?」

と小林が俺に聞いたからハッとした。


「えッ!?…いや?何でもないしッ…」

危なッ…
小林に俺の気持ちがバレたりしたら、きっと大変な事になる。


チラッと紗季に目をやると真っ直ぐに俺を見ていて、目が合ってドキリとした。


「……何ッ…?」

「…仕方ない、花火は諦めて…小林くんと行ってあげるよ!」

ふぅ…と首を傾げる紗季に、顔を輝かせて喜ぶ小林。


「――マジで!?ヤッター!聞いた?アッキー。聞いたよね!?約束だよ~、紗季ちゃん!」

「…はいはい。アッキーの『タコさんウィンナー』1個で手を打つ!」

紗季はそう言うと、
ネイルでキラキラした指先を俺の弁当箱に伸ばした。

ちょっ…
おい。


「――はぁ…!?俺のッ!!」

そう声を荒げる俺の目の前で、
ヒョイと口に放り込んだ。


「…辛気臭い顔してる方が悪い!タコさんにも失礼でしょ~?」

「――失礼はお前だッ!!」


俺がちょっと涙目なのは、

楽しみに最後にとっておいたタコさんを1個盗られたから。


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