月下の君には秘密です。
「…今ちゃん、そんなに勿体つけないで!…はぃ。」
小林はそう言うと、
なぜか頬を赤らめて両手を俺の前に出す。
「………はぃ?」
俺は勿論、聞き返した。
「……ぇ。だから~、あの子からの手紙?」
「…手紙って?」
「あ!?だから!…『直接渡すのは恥ずかしいから、今野先輩から小林先輩へ渡して下さい。私の気持ち…』的な?」
「…あぁ~…なるほどね。」
そう来たかッ。
すごいな、小林。
ぽん、と手を叩き納得した俺は、強引に小林からカバンを取り返した。
「――…うん。帰ろう、井上。」
そう二人に背を向けた俺に、
「「…――違うのッ!?」」
そう…
二人の声が重なった。
「……何、ソレ。井上まで…」
――…ヒドイと思うよ?
そう振り返って、
ふて腐れて井上を見ると、
あっ…と小さな声を漏らして、口を押さえた。
それから…、
全てを小林に話し終えるまでは、俺たちは帰してもらえなかった。
やっぱり小林は面倒くさい。