月下の君には秘密です。


「……俺、花火見るもんッ…」

と躊躇いがちに俺は言った。

…やっぱ、
俺、邪魔なのかな…?

なんて、
ちょっと思ったけど。
ちょっとだけ思ったけどッ。



「…子供達だけで行かせるのも危ないし、俺だけでも…付いて行こうかな…?」

そう言い出したのは、先程から一人渋い顔をしていた井上のお父さん。


「…また、あなたは~。子離れしてよ~。月ちゃんが居るんだから平気でしょ~?」

「そうそう、月ちゃんが保護者みたいなものでしょ~?うちのバカ息子は全然あてにならないけど~…」

母さん…

何かにつけて俺と月ちゃんを比較するのは、止めてください。


月ちゃんが居れば大丈夫。
月ちゃんが居れば、安心。

親たちの月ちゃんに寄せる信頼は絶大で…

もう慣れっこだけど、
本当はたまに…悲しくなる。


特に。
『今の俺』には。



「…本当に、間に合わなくなるぞ…?花火。」

月ちゃんは、
はははっ…と片眉を上げて、笑った。

その様子は、親たちに呆れている様にも見えて。
やっぱり、実は月ちゃんはこの中で一番大人なんじゃないか…、と思った。


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